富山大学・(株)能作 視察研修会のご報告

日 時:平成30年10月18日(木)・19日(金)
視察先:株式会社 能作(1日目)
富山大学 研究推進機構 産学連携推進センター(2日目)

○株式会社 能作 (富山県高岡市オフィスパーク8-1)

当社専務取締役である能作千春氏及びメディカル事業部の山田浩貴氏より、企業経営及び医療関連製品への取組みについて説明を受け、実際に工場見学等を行った。
富山県高岡市は慶長14(1609)年、加賀藩主の前田利長が“高岡”の町を開いたことを機に、“商工業の町”としての発展を遂げることになる。開町から2年後の慶長16年、前田利長は現在の金屋町に7人の鋳物師(いもじ)を招き、これが高岡銅器の長い歴史の始まりとなる。
株式会社 能作は大正5(1916)年、この高岡の地に400年伝わる鋳造技術を用いて仏具製造を開始。鋳造とは、溶かした金属を型に流し込み、冷やして目的の形状にする製造方法をいう。金属を流し込む型を鋳型(いがた)、その型から取り出してできた金属製品は鋳物(いもの)。能作は、素材特性を最大限に引き出すべく 様々な鋳造方法・加工技術を用いることで 鋳物の可能性を拡げ続けている。
創業当時は仏具、茶道具、花器を中心に、くわえて近年はテーブルウェアやインテリア雑貨、照明器具や建築金物などを手掛けている。風鈴やテーブルウェアの凛とした佇まいも、高度な鋳造技術や丁寧な仕上げ加工によるものでるが、本社工場では 先人により培われてきた生型鋳造法にくわえ 近年はシリコン鋳造法を開発し、鋳造方法の研究や新業種(医療分野)とのものづくりにも着手。柔軟な人員配置と産地内の職人ネットワークにより、様々な依頼やお客の期待に応えているとのこと。また現在当社では、「より能(よ)い鋳物を、より能(よ)く作る」だけではなく、「こと」「こころ」を伝える事業として、下記5つの事業を柱に産業観光に力を入れ取り組んでいる。

①FACTORY TOUR (工場見学)
高岡で400年にわたって育まれてきた鋳造の作業工程を案内者の解説付きで見学。鋳造づくりの現場のにおい・温度・空気感を肌で感じられる。

②NOUSAKU LAB (製作体験)
高岡銅器の伝統技法を用いた錫製品の製作を体験できる。生産鋳造法と呼ばれる鋳型用の砂を押し固めて成形する方法で型作りをする。

③TOYAMA DOORS (観光案内)
観光案内スペースを併設しており、富山の見所をプロジェクションマッピング等で見ることができる。

④IMONO KITCHEN (カフェ)
実際に当社で製作された錫の器等を使用して、錫の魅力も体感して頂く。また、富山の地元食材を使用した料理を提供。

⑤FACTORY SHOP
(株)能作本社のみで販売している限定品を多数揃える。また、富山の老舗和菓子メーカーとコラボしたお菓子や職人が着用しているものと同じTシャツ等を揃えている。
上記5つの事業では5感(熱さ・におい・音など)で感じて頂くことに重点を置き、伝統を伝えることによる地域貢献を目指しているとのこと。

また当該事業を通して地域の活性化を担う一方で、錫の特性である柔らかさや抗菌性を活かし医療製品の製作も手掛け始め、昨年には医療機器製造業の許可も取得。尚、医療分野への進出は歴史が浅いこともあり販社は持たずに、展示会等通じて知り合った医療関係者から直接依頼・相談等を受け製作を行っている現状である。
現在医療製品として一般向けに「ヘバーデンリング」という指の第一関節固定リングの販売を行っている。この商品は指の変形に伴う痛みや腫れのある指の第一関節に装着して安静を保つことがでる。また指の太さや変形に合わせて、適宜調整することが可能であり、錫の「曲がる」という特徴を生かした製品である。今後も医療関係者などと連携し、新たな商品開発を目指していくとのこと。

 ○富山大学 研究推進機構 産学連携推進センター

高齢者工学が専門である富山大学の中島一樹教授より、産学官連携で製品化を目指している「入浴介護アシストロボット」について研究内容の説明を受けた。
AI(人口知能)を搭載したイス型のロボットが要介護者に自動で接近し、介護者が要介護者を乗せると、事前に登録された要介護者の体型データを踏まえて、自動的に着座姿勢や座り心地を調整する。ロボットは防水仕様で座面が最大約70cmまで上がるので、介護者は中腰姿勢にならず体を洗うことができる。側面部分が開閉できる特殊な浴槽がある浴場ならロボットごと浴槽に入れ、要介護者は胸のあたりまで湯につかれる。ロボットについたポンプで肩から湯をかけることもできる。通常ならば、介護職員2人で対応する入浴介護が1人で済むといい、人材不足に悩む介護施設などの需要を見込んでいる。開発に着手したのは2016年。当初、民間企業や産業技術研究開発センターとの連携により事業を進める予定であったが、資金調達や民間企業の連携先が定まらず、あまり進捗がないとのこと。

<その他の研究開発内容>
「飲み込みセンサ」
介護の現場では、食事介助に最も強い困難を感じている。被介護者のペースでの食事を優先したいが他業務もあり負担感が大きい。介助を急ぐと、食物が気管に入ってしまい誤嚥が発生し、死にも至る肺炎を起こしかねない。そこで、飲み込んだことを知らせるセンサを開発しタイミングよく食事の介助をすることを目指している。
→飲み込み(嚥下)時及び安静時の加速度変化における単位時間あたりの積分値を算出したところ、全被験者(要介護高齢者)で安静時よりも飲み込み時に大きな信号が得られることが分かった。

「排泄物の非接触定量評価法」
毎日の生体情報測定が注目されている。感染症予防のために排泄物に非接触で測定する方法を考案した。排尿直後の尿は中枢温の37℃で放出される。この放射熱を測定することで排尿量を推定する。測定には、非接触マトリクス温度センサを使用し、センサからの温度データは、ブルートゥースで管理パソコンに伝送される。センサ部を既存便座の足などに内蔵すれば、今までの便器や便座をそのまま使用することができる。

「おむつ尿吸収量を推定できる汚れないセンサ」
高齢社会においておむつの利用者が増加している。排尿後のおむつを長時間放置すれば、皮膚の炎症や褥瘡発生の原因となる。提案センサの特徴としては、おむつカバーと一体となっているので、排泄物に触れず衛生的であること、繰り返し利用ができること、セットする手間が省けることなどがある。尿を吸収したポリマーインピーダンスの減少をおむつの外側電極で検知する仕組みとなっている。現在は、ひとではなく高齢ペットへの展開を検討している。

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