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 「くみあい百景」 
 編集室便り 



くみあい百景



苦難を乗り越え業績拡大

 組合員の加工場から排出される魚腸、残滓の共同処理施設である廃棄物処理プラントは、環境保全と水産資源の有効利用を目的に運営されており、その副産物としてフィッシュ・ミール(魚粉)とフィッシュ・ソリュブル(蛋白液)および魚油を生産している。
 平成十五年度の実績は魚腸の処理が七、二九九トン、残滓が六、一八七トン。副産物の生産量は魚粉(鶏の飼料、養魚の餌料)二、三六一トン、魚腸蛋白液一九七トン、肥料蛋白液六四六トン、魚油一、七九六トンとなっており、組合員からの処理料収入一○四、一五○千円、副産物の売上高二二六、一五六千円。当期利益は六○、一一一千円となっている。
 水口理事長は「現在は魚粉、蛋白液とも価格、受注が安定しているが、操業以来、決して平坦な道とは言えなかった。平成七年の一ドル百円をきった円高時には、それまでペットフードの原料として需要があった蛋白液の生産拠点が海外にシフトし国内需要がストップ。この時、魚粉価格も安かったことから組合収支は赤字。高度化資金の償還もおぼつかない状況だった。
 高度化資金の償還猶予を申請し、組合員から一三五、○○○千円の無利息の資金を借入れ、かつ、処理料を二割アップしてもらい、以降の償還財源を確保することができた。
 これも組合員の「共同処理事業を維持していこう。」という積極的な姿勢、組合事業に対する大きな理解、協力があったからこそ。おかげでその後は順調、ここ三年間は処理料を年間二ヵ月分値引きするなど、組合員の負担を軽減できるようになった」と言う。



▲「経営の合理化で
 組合員の負担を軽減
 したい」と語る
 水口理事長

意欲的な職員と近代化設備

 今日の安定した運営の背景には、様々な要因があげられる。理事長は「第一に職員が業務に意欲的に取り組んでくれること。平成七年、蛋白液が売れなくなった時、それまで蛋白液に加工していた魚腸を魚粉にしよう、と取り組んだ。組合に持ち込まれる廃棄物は魚腸が多く、また、蛋白液の需要には限りがあるので、組合にとって大きな取り組みだった。魚腸は水分が多く腐敗も早いので水分除去が必要。蛋白液の製造に比べ、蒸煮する燃料費もかかるが、職員の工夫と努力で翌八年から魚粉への製造が実現化した。また、産業廃棄物処理やボイラー技士などの資格取得にも一人一人が積極的に挑戦してくれている。
 第二に機械設備の自動化と改良。副産物を生産する際、作業員が手作業または直接、目で確認という劣悪な環境での工程を自動化、制御室でコントロールできるようにした。これで省力化が図れ、新規事業に人を配置できている。また、乾燥時に発生した熱を濃縮機に配送する廃熱利用、職員の提言による機械の改良等々に積極的に取り組んできた。廃棄物の内容からも設備の消耗が激しいので、保守管理、環境保全には十分気をつけている」と話す。

安全性重視で組合員に寄与

 当面の課題と目標については「注意しなければならないのは第一にBSE(牛海綿状脳症)対策。飼料用魚粉に哺乳動物、家禽由来の蛋白質が混入しないよう注意すること。第二に重金属(鉛、カドニウム、水銀、ひ素)の含有基準をオーバーしないこと、第三に病原微生物(サルモネラ菌)の混入防止で、大手企業でも一番頭を悩ます問題だ。 
 廃棄物を持ち込む段階が重要なので、組合員全体で取り組み、これまで問題化したことは一度もない。国(独立行政法人肥飼料検査所)の年一回の定期検査のほか、BSEは四半期毎、重金属は年一回、サルモネラ菌は毎週一回、自主検査を実施している。
 今後については、現在の順調な組合運営を保持できるよう努力し、さらに経営の合理化を進め、組合員の負担の軽減を図っていくこと」と語った。
 海外市況や為替相場に左右される不安定要素はあるものの、組合員と職員が一丸となって苦難を乗り越え、高い業績を収めている。この取り組みに対し、平成十五年度の県中央会表彰式典では優良組合として産業振興知事褒章を受章した。
 沼津の誇る水産業界を支え、その振興に欠かせない組合として、今後一層の発展が期待されている。



中小企業静岡(2004年8月号 No.609)